書店で何気なく手に取った本ですが、これはめちゃくちゃ分かりやすく、面白い!

世界史の本って、学校の教科書のように、古代→中世→近代→現代と、時間軸で説明しているものが多いですが、本書は「中国」、「ヨーロッパ」、「アメリカ」と、それぞれの地域ごとに章立てしており、各章数十頁で約2000年の歴史を一気に解説してくれてます。そのスピード感がたまりません。

目次は、次のとおり。

第1章 日中・日韓関係史を理解する
第2章 一神教を理解する
第3章 ヨーロッパ文明の源を理解する
第4章 近代ヨーロッパを理解する
第5章 アメリカ合衆国を理解する


第1章では、中国の誕生の話から始まり、朱子学などの中華思想がどのように生まれたのかという話になり、近年、中国・韓国の反日思想が根深いのはなぜかという話にまで一気に駆け抜けます。中国の歴史を語るには「思想」の問題が横たわることがよく分かります。

第2章では、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の誕生の話から始まり、様々な宗教対立の話から、近年の中東問題にまで串を指してくれます。ヨーロッパの歴史には、「宗教」「民族」の問題が横たわることが分かります。

第3章では、ヨーロッパで政治権力と宗教権力が分離し(政教分離)、民主主義が誕生し、それが衆愚化し、独裁政治が生まれ・・・という「国家(領土)」「政治(権力)」の歴史を駆け抜けます。ソクラテス、プラトンなどの哲学者が生まれたのは、この時代・この地域の国家・政治への批判でもあるわけですね。

第4章は、現代の歴史を動かしている「グローバリズム」(もしくは資本主義)と「ナショナリズム」(民族主義)について、マルティン・ルターの宗教改革、ホッブス、ロック・ルソーの思想まで遡って俯瞰させてくれます。

第5章は、アメリカを取り上げ、聖と俗、平等と差別、自由と奴隷、解放と支配・・・という偽善と矛盾を抱えた超大国の歴史が紹介されています。

こうやって一気に読むと、「理想」と「現実」の間で闘争し、価値観の揺らぎを繰り返しながら、世界史が作られているということがよーーく分かります。そして、今なお、自由・平等を掲げる大国が「テロとの戦い」を繰り広げています。現在の政治・経済・外交などの諸問題やニュースが、本書で書かれているような歴史の延長にあり、歴史が繰り返されていることもよく分かります。

著者は駿台予備校の著名な講師だけあって、解説が非常に分かりやすく、さらに予備校の授業を聴いているようなライブ感があり、これほど引き込まれ、勉強になった世界史の本に出会ったのは始めてかもしれません。既に5回転以上読んでますが、まだ何度も読み返すと思います。

学校の歴史の教科書は、年号と事実を羅列しただけの「超」下らないテキストとしか思えませんが、本書のような「歴史観」を学ばせてくれる本というのは貴重です。

書店で見て、「いいかも」って思った本は、とりあえず買うべきですね。


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