某カフェにて。

隅に30歳くらいの男性と、高校生っぽい男子学生の2人が向かい合って話をしている。

特に気にもせずに、彼らの隣の席に座る。
いつも通り、ノイズキャンセリングイヤホンを付けて外部の音を完全に遮断し、ノートPCに向かう。



数十秒後、異様な雰囲気に気付く。

イヤホンを外す。

隣の30歳くらいの男性が、モーレツな情熱で、高校生っぽい学生に人生論を語っていた。

僕はねぇ、20代前半で、脳梗塞になったんだ。


えっ??

僕だけじゃない。よくみると、周りの客も、彼の話に聞き耳を立てているようだ。

人生は何が起こるか分からない。自分がやりたいことをやらないとダメなんだ。


話を聞いていると、隣にいる情熱の男性は、予備校講師っぽい。彼の話を熱心にうなずきながら聴いていている高校生っぽい男子学生は、この4月から大学に進学するようだ。先生から生徒へ、最後のメッセージなのだろうか。

お金を稼ぐことって、どういうことか分かるか?


高校生には難しい質問だ。

お金を稼ぐことって、世間では悪いことのように思われているよね。


そうだね。

でも、お金を稼ぐことって、悪いことじゃないんだよ。

お金というのは、人を喜ばせたことの対価なんだよ!
分かるか!?
「ありがとう」の対価が、お金なんだよ!


いいこと言うじゃねーかよ!!

お金を稼ぐって、素晴らしいことなんだよ!


俺もそう思うよ! センセー!

でもね!


何だよ!?

これから10年後、20年後の仕事は、今の仕事とはガラリと変わっている。


ん?

こんな話、聞いたことない?
今ね、従業員がいないホテルがあるんだ。
フロント業務をロボットがやってるんだよ。


うんうん、知ってるよ。でも、それがどうした?

こんな時代がくるなんて、数年前まで考えられなかった。
でも、時代は凄まじい勢いで変わっている。

だから、今、この瞬間に何がしたいかってことではなくて、
10年後、20年後に何をしたいのかを考えてほしいんだよ!


そういうことかよ! センセー!

労働者の数はどんどん減っていくんだ。
人がやらなくていい仕事はロボットがやってくれるようになるんだ。
そうすると、僕たちがやるべき仕事って何だろう??


もったいぶらずに教えてよー! センセー!

人を喜ばせたい、笑顔にしたいと思っている人は残るんだよ!!


なる〜ほ〜!!

ロボットに使われるような人間になるんじゃないぞ!
これからは、お金のこと、経済のことを勉強するんだ!
大学に行ったら、世の中の流れとか、仕組みとかを学ぶんだ!
自分は何者にでもなれるんだぞー!!


うぉー!!! 分かったよー! センセー! 



ってな感じで、
情熱講義は1時間半に及び、2人は駅の方に向かって帰って行った。
カフェの客は、ガラスの向こうに小さく消えていく2人の姿を目で追っていた。

オリエンタルラジオの中田のようなモーレツ講師がいることが少し嬉しく思った。

春うららだね。