孤独論: 逃げよ、生きよ
田中 慎弥
徳間書店
2017-02-09



田中慎弥さんといえば、2012年に『共喰い』で芥川賞した受賞した際の記者会見において、「都知事閣下と東京都民各位のために、もらっといてやる」などと選考委員の一人であった石原慎太郎を挑発するような発言を行ったあの方。これには賛否両論あったと思いますが、私は、シャイだけど芯がある方なんだろうなぁと肯定的に取りました。

その後、2013年1月放送の『情熱大陸』では、パソコンもケータイも持たずに、2Bの鉛筆で原稿にひたすら書き続ける姿や、「鉛筆と紙があればつらくない」と言っていたのを見て、何となく好きになりました。

その田中慎弥さんが『孤独論』というタイトルのエッセイを出されたということを知り、読んでみました。全体的に「奴隷状態から逃げよ」「孤独から活路を見出せ」という強いメッセージ。

私も「積極的な引きこもり」ですから、『孤独』が思考を強化し、自分の価値を高める時間であることを知っていますし、この時間が足りないと自分が駄目になっていくと思っています。本書でも同じようなことが書かれています(第三章参照)。

田中氏は、もし『孤独』が不安だとしても、「そこは耐えるしかない」(P79)し、「孤独を拒んでなしえることなど、なにひとつありません」(同)と述べています。しかし、私たちは無数のコミュニティーに属しているため、完全な孤独というものはない(P72〜)。その中で気を付けたいのが、社会、会社、仕事などの『奴隷』にならないこと。毎日が忙しい、思考を重ねる暇がない・・・という環境であれば、「あなたがやっていることは惰性であり、思考停止です。」(P91)。このような奴隷状態からは、(上述の通り)逃げるべし。ブラック企業も然り(P171参照)。

やるべきことはひとつ。いまいる場所から逃げることです。
意地やプライドは余計な荷物だということを自覚してください。そんなものはどうでもいい。

(略)
自分の命を守り、生き方を取り戻す方がはるかに重要です。とにかく、よからぬ状況から逃げ出します。
(略)
大げさではなく、逃げることでしか救われない命もある。真剣に考えてほしいと切に思います。(P26〜)


つまり、田中氏は、(当然)単なる引きこもりを薦めているわけではなく、本書のサブタイトルにもあるように『逃げよ、生きよ』という脱奴隷化と、生き方を取り戻すための適度な孤独化を薦めている。

総じて共感だらけ。

奴隷状態から突破するために「読書」も薦めており(第四章)、これも共感できるのですが、これを書き始めると長くなるので、また別の機会に。

軽〜いエッセイと思って読んだのですが、意外と(というと著者と出版社に失礼ですが)ずっしりした内容でした。オススメです。


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