『私をリーダーに導いた250冊 自分を変える読書』という本の中で、ある社長が『低欲望社会』は読み応えがあった、と薦めていたのをみて購入。
それにしても、日本人の若い世代を中心に見られる、内向き・下向き・後ろ向きで、欲もなく、志もない者が増加している現象を、『低欲望社会』とは、うまく表現したものです。
この閉塞感あふれる日本を明るくする新しい国富論を大前研一氏が説きます。
根底にあるのは国の政策への批判と危機感。最近の「働き方改革」や、富裕層を狙い撃ちした税制への批判は、共感です。「働き方改革」は、私も、国が口出しすべきではなく、”余計なお世話”だと考えてましたが、大前氏も「愚の骨頂」(P8)だと切り捨てます。相続税増税の「過酷な税制」(P34)については、「そこそこの収入や資産を得たら、それ以上に収入や資産を増やそうというインセンティブはなくなってしまう」(P34)と指摘しますが、それは激しく同意します。相続税増税に限らず、所得税の最高税率の引き上げは富裕層のモチベーションを下げているはずです。「与党が人気取りのために富裕層への懲罰的な課税強化を重ねているわけで、それに嫌気をさした金持ちが海外へ逃避するのは当然だろう」(P213)という指摘も同意です。日本の場合、医者や農民などは税制面で極めて優遇されていたり、一定の所得に充たない者は税金を払わなくてもよくなっており、税負担が平等ではありません。大前氏は、「最低でも5%は課税し、累進性にするとしても最高税率は25%程度に抑えるべき」(P36)と提案してます。ちなみに、現在は所得税・住民税を合わせると最高税率55%です。
大前氏は、法人税減税についても猛烈批判(詳細はP156〜)。結局のところ、今般の税制改革により、富裕層や日本企業が海外へ流出するインセンティブを招いているとしか言いようがない。根本的な制度改革が必要なのに、小手先の微調整だけ行い、取れる所から姑息に税金を巻き上げるというやり方をやっているわけだから、国に見切りをつける人や企業が現れるのは当然だと思います。
本書を読んで、少し衝撃を受けたのは、下の図表。
濃い色が自然増加率で、薄い色が社会増加率(=移民)を表しています。つまり、他の先進国はすべて移民を受け入れていますが、日本だけは移民を殆ど受け入れていないため、自然増がマイナスに転じたことが分かります。

さらに衝撃を受け入れたのはが、下の図表。
日本では平均年齢を見ると、女性が結婚後約1年経ってから第1子を産んでいる計算になります。しかし、日本以外の国々では、いずれも結婚する前に第1子を産んでいる計算になります。婚外子の割合が日本は極端に少ないということが分かります。こんな状況でありながらも、家族関係の政府支出が対GDP比率で低水準になっている。

他にも取り上げたい話がたくさんありますが、この辺で。
確かに読み応えのある1冊でした。