日経新聞 日曜日朝刊の「読書面」において、月に2回、『リーダーの本棚』という連載コラムがあります。その名の通り、各界のリーダーといえる方が、自分の座右の書を紹介するというもの。

この『リーダーの本棚』というコーナーは、日経新聞の中で私が最も好きなコーナーの一つで、これまで特に良いと思った記事はモレスキンに貼り付けて、何度も読み返してきました。

『リーダーの本棚』を読めば、
 ●各界のリーダーがどのような本を愛読してきたのか
 ●どのような本をバイブルにしてきたのか
 ●本をどのように読んでいるのか
 ●本とどうやって向かい合ってきたのか
 ●本のどういう所に感銘を受けたのか
 ●本での学びをどうやって人生や仕事に活かしてきたのか

といったことが(行間から)も分かりますので、単に新刊書を紹介する書評コーナーとは違った気付きや楽しみがあります。


さて、前置きが長くなりましたが、この『リーダーの本棚』が遂に書籍化されました。

これまで『リーダーの本棚』に登壇された方の中から50人の方のエピソードが書籍化されております。改めて全てを読み返すと、ホントに面白い! 50人のエピソードを続けて読むと、ビジネス書を紹介している方は少なく、歴史、宗教、思想関連の書籍を取り上げている方が多いことや(特に塩野七生さんの書籍を複数の方が取り上げている)、フィクションは一切読まない人もいる中で小説を愛読している方が多いこと(特に浅田次郎さんの書籍を複数の方が取り上げている)に気付きます。また、速読している方よりもじっくり読むタイプの方が多いという印象もありますし、幼少期から本に親しんできたんだろうなぁという方が多いという印象もあります。


私がモレスキンに貼り付けて、何度も読み返してきたのは、5名のリーダーの記事なのですが、そのうち以下の4名のエピソードが書籍に収録されています。

 ●日本電産 永守重信社長
 ●三井住友海上火災保険 柄沢康喜社長
 ●富士フィルム 古森重隆会長
 ●三菱ケミカル 小林喜光会長


永守重信社長については、リーマンショック直後に1ヶ月位図書館通いをし、1930年代の世界恐慌の時に業績が急回復した会社の研究をした中でGEの対応策が参考になったというエピソードが載っています。これ程の方でも自分で図書館に行って文献をあたってるということに深く感銘を受けました。

柄沢康喜社長については、高校生の時に西田幾多郎の『善の研究』を読んで感動したというエピソードに感動しました。ヘーゲルも高校生の時に読破したといいます。しかし、ビジネス上のバイブルはドラッカーだと。

古森重隆会長については、大学生の時にニーチェの『ツァラトゥストラかく語りき』を読んで、「私の考えにぴったりだと思った」というエピソードが載っています。人間を知り、己を知るために読書をしてきたといいます。

小林喜光会長のエピソードは強烈。イザヤ・ベンダサンの『日本人とユダヤ人』を読み、ユダヤ人を知りたくなってイスラエルへ留学。砂漠の蜃気楼の中の死の世界を旅して啓示を受けたといいます。そして、今に至るまで、読書を道しるべとして、自分とは何者かを知るための精神の放浪を続けてきたのだと。


他の方のエピソードも、紹介したいものがたくさんありますが、書き出したらキリがないので、後は本書を手にとって読んでみてください。本書に取り上げられたリーダーといわれる方に共通することは、読書が精神的な支柱となっていることです。良い本を読んで、良い人生を歩みたいものです。読書好きな方には超オススメの一冊です。