先日紹介した大平健著『やさしさの精神病理』には、人々が、相手の心の中には踏み込まず、相手との滑らかな関係を保とうする「やさしさ」を持つようになったことが書かれていました。
対人関係において、他者との対立や摩擦を徹底的に避けるようになったのです。

この『やさしさの精神病理』が出版された1995年は、まだケータイもPCも普及していない時代。この時期に爆発的に普及したのが「ポケベル」でした。私も当時はポケベルを離さずに持ち歩いていたものです。

それまでの通信手段であった「固定電話」は、かける時も、かかってきた時も、能動的に動かなければならず、葛藤もありました。しかし、「ポケベル」はそのような葛藤はありません。「コミュニケーションの第一歩を相手に委ねることが出来る」(同書P88参照)からです。「やさしさ」を持つ人々にとって「ポケベル」は便利なコミュニケーションツールですから、一気に広がったわけです。



さて、今日紹介する東浩紀著 『弱いつながり』は、1995年当時の「ポケベル」時代から20年が経った「ネット」時代における人間関係を考える上で大変おもしろい一冊です。

この『弱いつながり』の冒頭に、こう書かれています。

『ネットは階級を固定する道具です。』

つまり、facebookもLINEも、考えが同じ人だけを選んでやり取りができますし、気に入らない人をブロックして対話を遮断することもできますから、非常に狭くて固定化されたコミュニティが出来てしまいます。

そのような、狭くて固定化されたコミュニティでの人間関係を「強い絆」と言えるかもしれませんが、我々は環境に規定された動物ですから、ネットに依存していると人生を豊かにする機会(例えば、人と偶然に出会うことなど)を失うことになってしまいます。

果たしてそれでいいのか?

東浩紀氏は、本書で何度も訴えます。

『環境を変えろ』


これは言い換えると、(強い絆ではなく)「弱い絆」がランダムに発生する場に身を置け! ということです。

facebookでのつながりは強い絆でもなんでもありません。

東浩紀氏は言います。

  ・ネットに接続しても、人間関係は遮断しろ!

  ・友人に囚われるな!

  ・人間関係を(必要以上に)大切にするな!


人が自由であるために、人生を豊かにするために、『弱いつながり』を大切にしていこう、という強烈なメッセージに、ただただ頷くばかりでした。



この世で最も「強い絆」とはなんでしょう。

それは、きっと親と子の絆でしょう。

それ以上のものは無いのです。