「大発見」の思考法 (文春新書)「大発見」の思考法 (文春新書)
著者:山中 伸弥
文藝春秋(2011-01-19)
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ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英氏と、アメリカのノーベル賞といわれるラスカー賞を受賞した山中伸弥氏との対談。

最先端の科学者の話はファインマンさんのように面白い。
山中伸弥が作り出したiPS細胞の「i」だけが小文字なのは、「iMac」や「iPod」人気にあやかろうとしたからだという話や、益川敏英がノーベル賞を受賞したきっかけとなったのは、過去の実験・検証に見切りを付けることを決断した風呂の湯船を出る瞬間の閃きだったという話などなど、「へ〜ぇ」という話が多い。

山中伸弥の始まりは整形外科医だったという話は驚きだった。
学生時代の柔道で十回以上骨折した経験のある山中伸弥は「スポーツ外傷の患者さんを治療する専門医になりたい」(P62)と思い、神戸大学医学部へ進学するも、その後、動脈硬化の研究をするためにアメリカに留学したり、帰国後は万能細胞の研究をしたり、「自分の中では、その時々の研究結果から興味の対象がどんどん変わっていき、それに従って行動しているはずですが、フラフラしているようにしか見えなかったかも…」(P77)という生活がしばらく続いたようだ。
それが今はiPS細胞の研究の最先端にいて、ノーベル賞有力候補ともいわれている。
一見無駄に思われることでも、経験したこと、体験したことで無駄なことはないということを教えてくれるエピソードである。
「もっと合理的な生き方が出来たんじゃないの? と思われるかもしれませんが、そうやって回り道をしたからこそ今の自分があるんじゃないかと思います。」(P78)


山中伸弥も益川敏英も、無駄を省き合理性と突き詰めた「直線型の人生」より、面白そうなことがあればそちらに方向転換するような「回旋型の人生」を提唱している(P78〜)。「直線型の人生」は「いつか壁にぶつかる」(益川)からだ。

「回旋型の人生」を歩む二人に共通することは、目の前の面白いことで遊ぶこと(P81)、憧れを見つけたら、ドン・キホーテのように一歩を踏み出すこと(P73)、そして、目標は高く持ち(P162)、とことん追及すること(P163)、こういう生き方だ。

エチ先生の話を思い出しました。