勝つまで戦う 渡邉美樹の超常思考 (講談社BIZ)勝つまで戦う 渡邉美樹の超常思考 (講談社BIZ)
著者:渡邉 美樹
販売元:講談社
発売日:2009-07-31
おすすめ度:4.5
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●渡邉美樹の思考法とは?

先日、イチロー選手の思考法について書かれた本を紹介したが、今回は経営者の思考法をご紹介。

尊敬する渡邉美樹氏が、どのようにして思考法を形成していったか、いかにしてその思考を行動へと結びつけていったかを詳らかにした本。

渡邉美樹著『「戦う組織」の作り方』(PHPビジネス新書)でも書かれているが、渡邉美樹氏は、東洋思想家の安岡正篤氏「思考の三原則」を思考の原点にされている。

「思考の三原則」とは、以下の通り。
「私は物事を、特に難しい問題を考えるときには、いつも三つの原則に依る様に務めている。
第一は、目先に捉われないで、出来るだけ長い目でみること、
第二は物事の一面に捉われないで、出来るだけ多面的に、出来得れば全面的に見ること、
第三に何事にもよらず枝葉末節に捉われず、根本的に考えるということ

である」
(『安岡正篤一日一言』より)

つまり、物事を「長期的・多面的・根本的」に考えて、判断するということである。

この「思考の三原則」は、私もかつてから手帳に記していた言葉であり、経営するにあたっては最も大事なことの一つであると思っている。

ひとことで言えば、鳥瞰力があるかどうか、ということだ。

渡邉美樹氏も本書で書いているが、これは「シンプルで当たり前のことを言っている」が、「実践するのはなかなか難しい」ものである。
なぜなら、多くの経営者が「思考の三原則」と全く逆の考えをしているからである。
例えば、短期的な損得しか考えていなかったり、物事を一面的にしか捉えていなかったり、裏側から見るとどうなるのか、自分以外の立場から見るとどうなるのかといった思考回路がなく、枝葉末節に捉われ、本当に重要なことを見失ってしまっていたり・・・。
つまり、「短期的、一面的、表面的」にしか考えられない人。
本当に、そういう経営者が多いように感じる。

話しは反れるが、私は「会議」というものが大嫌いな人間である。
なぜなら、多くの人が集まると、「思考の三原則」の欠片もない人が必ず一人はいるからである。「短期的、一面的、表面的」思考の者と、「長期的・多面的・根本的」思考の者が議論して、話が交わることはない。経営というものは、会議等で多くの人の「意見」を聞き、最終的な「決断」はトップが単独で行うべきだと思う。「決断」を多数決もしくは全員一致で行うと、とんでもない時間が浪費されることになる。多くの会社が、「会議」の場で、意思決定を多数決もしくは全員一致で決めようとするから、限られた労働時間の多くを浪費することになる。1分1秒無駄にしたくない私にとって、大半の「会議」はストレスとなる。

思考力を高めるためには、物事を「長期的・多面的・根本的」に考えることが極めて大切である。これは、経営者に限らず、ビジネスをする者にとって極めて重要なことであると思う。