反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)
著者:湯浅 誠
販売元:岩波書店
発売日:2008-04
おすすめ度:4.5
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前回ご紹介した「子どもの貧困」でも参考文献に挙げられていたこの本。
「派遣村」村長で有名な湯浅誠氏の「反貧困」


こぼれ落ちたが最後、どこにも引っかかることなく、どん底まで落ち込んでいく「すべり台社会」の中で、多くの人が「貧困状態」にある。
なんと、年間を通して働いているにも関わらず年収200万円未満という人が1000万人を超えているという。高齢者や無職を含まれば、所得のもっとも低い20%の人たちの平均年収は129万円(P33)。


貧困や犯罪、児童虐待や自殺といった根本的な原因は「自己責任」なのか。
著者は「自己責任論とは相容れない」(P82)という。


非常に分かりやすい例えで説明してくれている。
貧困状態にある人たちに自己責任を押し付けるのは、「溜池のない地域で日照りが続く中、立派に作物を育ててみろ」と要求するようなものであり、また、「日々の激務の中で疲れ果て、うつ状態になり、ついには過労死してしまった人に、プロボクサー並の健康管理をやってみせろ」と要求するようなものだ、と。


「自己責任」というのは、「他に選択肢があって、それを選べたはずなのにそれを選ばなかった」という時に成り立つ話であるが、貧困状態に追い込まれた人には自由な選択が奪われている状態であり、「基本的な潜在能力が欠如した状態」でもある。


では、貧困の根本原因は何か。
「子どもの貧困」でも詳細に述べられているが、それは「日本社会のしくみ」が原因ではないだろうか。
「政府を始めとする日本社会総体は、貧困問題に関して、依然としてスタートラインにさえ立っていない」(P104)という現状は何とかしなければならない。