
著者:山田 有人
販売元:税務経理協会
発売日:2008-11-12
おすすめ度:

クチコミを見る
なかなか面白い本です。
著者の山田有人(やまだありひと)氏は、大原大学院大学の教授であり、吉本興業の監査役も務める公認会計士。以前は民間企業のCFOも務め、企業2社を上場させた経験もあるようです。
「この本は、一人でも多くの若者に、経営参謀、すなわちCFOという職業に興味を持ってもらい、最も重要なスキルとなる簿記や会計を勉強してもらうことを目的に書かれている」(P130)
とあるように、第1編では世界の経営参謀(CFO)の事例を紹介し、第2編でCFOとはどんな職業か(経理部長や財務部長とどう違うのか)について説明がなされている。第3編は、少し話が反れるが、会社は誰のものか論や、企業価値論を実にコンパクトにまとめてくれており、第4編の本書の結論へとつながる。
第4編・第12章「なぜ不正会計は無くならないのか」に書かれているミルグラムの実験結果と不正会計の関係・内部統制の問題点のお話しなどは非常に興味深い内容でした。
第2編・第7章の「会計の学習ほど効率のいい投資はない」の中に書かれている「日本の会計教育の問題点」は、とても共感できる内容でした。
日本という国は、会社数が320万社ある中で、簿記検定受験者が累計2000万人、年間受験者数が60万人を超えているという高い簿記能力を有する国であるにもかかわらず、大学において会計に関する専門的知識を学ぼうとする学生が極めて少ない。本来、企業の経営に役立てるために会計を勉強する人が一番多くいなければならないのに、日本の会計教育は、受験専門学校による資格試験対策か、学問としての会計を尊重する大学教育か、といういびつなバランスで成り立っている、と書かれています。
本当にその通りで、日々、上場企業の経理部の方と接していますが、彼らの大半は、大学で会計を勉強していたわけではなく、会社に入ってたまたま経理部に配属されたという人。経営参謀(CFO)を目指すにも、そのための教育を受ける場所がない。特にある一定レベルに達するまでは。本書でも、専門学校の公認会計士や税理士用の受験講座のうち会計に関する講座等を受験することにより高度な会計学に知識を習得できる、とありますが、でも、経営参謀(CFO)を目指すための教育プログラムではないので有用性が高いとはいえないのではないかと思います。
以前から、経営者のための教育プログラムの開発が必要だなぁ、と思っていましたが、本書を読みますますそれを強く感じました。
さて、ここまで読まれた方は、何やら難しい内容の本かと思われたかもしれませんが、平易なコトバでCFOの世界を紹介してくれており、むしろ会計初心者の方や、CFOって何している人か分からないというような人にこそおすすめしたい一冊です!
■目次
第1編 世界で活躍する経営参謀
第1章 グーグルの上場を支えた立役者
第2章 ソフトバンクの躍進を支えたM&Aの仕掛人
第3章 ディズニーのアイドルCFO
第4章 日産のV字回復を成し遂げたもう一人の外国人
第5章 エンロン事件を起こしたCFO
第6章 敵対的買収を仕切るミタル社の若き参謀)
第2編 「会計学のススメ」とCFOという職業
第7章 会計の学習ほど効率のいい投資はない
第8章 CFOとは専門的知識を持った経営者である
第3編 会社は誰のものか?
第9章 敵対的買収の事例から言えること
第10章 企業価値とは何か?
第4編 既存システムの限界と新しい時代のCFO
第11章 企業のパラダイムシフト
第12章 なぜ不正会計は無くならないのか?
第13章 新しい時代のCFOに求められる資質